消費者運動「鯨類に感謝 @ Thanks Cetacea」 【くじらの消費者運動】

【鯨類食文化の理解促進】 捕鯨と「いるか漁業」。東京の鯨食人口は1割以上いるとされます。小型鯨類(いるか類)は、岩手、秋田、山形、福島、茨城、千葉、神奈川、静岡、山梨、和歌山、沖縄等の県内の地域での伝統食です。

反捕鯨によって、日本の冷蔵鯨肉の正確な在庫量や正確な消費量が不明に

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20190730--大型のクジラ肉 仙台港に初陸揚げ 商業捕鯨の主力 - NHKニュース

捕鯨国による「北西太平洋イワシクジラ(調査捕鯨イワシ鯨)叩き」のお陰か、反捕鯨による「鯨肉の冷蔵備蓄叩き」で、日本の冷蔵鯨肉の正確な在庫量や正確な消費量が不明となった件


今回の水産庁水産物流通調査」の「冷蔵水産物流通調査」は意外な数値に

2020年7月31日に水産庁「水産物流通調査」の「冷蔵水産物流通調査」に、2020年5月分と4月分との各データが公表されました。
4月分のデータは通常6月半ばに公表されるので、1カ月以上遅れました。
この「冷蔵水産物流通調査」には「くじら」(主に鯨肉)も記載されています。

以下は、くじらについてだけ書きます。


今回の数値の改正(修正)のポイント

今回2020年7月31日の、水産庁水産物流通調査」の「冷蔵水産物流通調査」は、直近の過去のデータも改正(修正)されたようで、2020年3月分など過去データ数値が、くじらは千トン程低く改正(修正)されました。また、修正の開始は、2019年1月分(https://archive.vn/LIVEv)以後からのようで、2018年12月分(https://archive.vn/k2Wes)以前は昔のままの数値のようです。

減ったのは、調査捕鯨イワシクジラの冷蔵在庫(冷凍在庫)分だと思っています。(この理由は後述します)


2020年3月分の過去と現在との比較はマイナス968トン(約千トン)

以下に「3月分の月末在庫量 計」を閲覧日8月4日と、記録日5月23日との数値の比較をします。
①8/4アーカイブ(今公表中)1907t
https://archive.vn/gmPxY
②5/23アーカイブ(昔公表した数値)2875t
https://archive.vn/EiAJf
①と②とで差し引き「マイナス968トン」となります。

くじらの冷凍在庫の数値は千トン近く下方修正されております。


実際の冷凍在庫の減量ペースは約800トン。見かけ上の減量ペースは440トン

3か月前の2020年5月頃に、当方は冷凍備蓄の鯨肉の在庫が「年約800トン」ほど減ったと、計算をしました。↓

irukanigohan.hatenablog.com

「在庫の消費は年約800トン」と判り、当時の鯨肉の冷蔵在庫(冷凍在庫)は3000トン以下なので、鯨肉の冷凍在庫(冷凍備蓄)は3年分は有り、4年分は無いだろうと計算できました。
つまり、
2020年5月から4年経つと、「食料安全保障としての備蓄はゼロ」となり、以後は、その年(そのシーズン)に捕鯨船が捕ってきて年内(年度内)で消費される冷凍在庫(文字通りの一時保管)しか存在しない未来図です。これを行うと、確かに公金の支出が減ります(でも、もともと大した支出ではないです)。
一方、鯨肉関連産業(鯨肉加工業などくじらの利用者や、くじらの消費者)は、くじらの安定供給に不安が出ます。

そもそも、くじらを冷凍備蓄している真意は、日本の捕鯨が反捕鯨国の嫌がらせ(無理解)により政情不安にさせられ、くじらの安定供給が妨げられる虞がある(実際に調査捕鯨を休止した年もある)から、それへの備えの意味(関連産業の維持および鯨食の維持の為の食料安全保障)のはずです。

「年約800トン」と判ったので、当「くじらの消費者運動」が「くじらの消費者アンケート」を実施したところ、「冷凍在庫の減るペースが速い」との意見が最も多くなるアンケート結果になりました。(以下の画像の通り)
くじらの消費者の多数派は、冷蔵備蓄(冷凍備蓄)がゼロとなることに懸念を持っているのです。

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20200505--くじらの消費者アンケート設問「鯨肉の冷凍在庫が1年で800トン減りました。 冷凍在庫の減少が速い?」の結果です適正な感じがします 19.6% 冷凍在庫の減少 が早い 41.3% 冷凍在庫の減少が遅い 10.9% わからない 28.3%

https://twitter.com/irukanigohan/status/1257511035700834304


見かけ上の冷凍在庫減の年ペースは約440トン

そして今回、2020年7月末に修正された数値データ(①2018年12月末 2482t②2019年12月末 2043t )が公表されました。
①から②を差し引いて、「在庫は1年で439トン減った」と示されました。

年440トン程度のペースならば、鯨肉の冷凍在庫は「あと5年程(4年以上)は有る」と、見かけ上は見積れます。

否! コロナ不況前の冷凍在庫の年間の消費量は「約800トン」です。毎年、約800トン減っているのです。

ただし、今年2020年春からはコロナ禍による外食不況や、3密対策や外出自粛などで割高な「おこもり」への消費(通販、テイクアウト、小売りなど)へシフトし、それに伴い、鯨肉の消費も減っている感触があります。
でも、この消費低迷の傾向は一時的であり、コロナ禍が過去のものとなる数年後には「案外、消費は回復している」と考えております。


冷凍在庫が何年持つかによって、国の捕鯨政策の速度が変わります

なぜ冷凍在庫が何年あるか(何年もつか)が関心の的なのか。

現在の最大生産量(2019年に定めた捕獲枠)では、日本の捕鯨業が業を維持できない量でしかないので、当然ながら増産(増枠)を強く国に求めています。これは、鯨肉ファンである少なくない「くじらの消費者」も賛成でしょう。
しかし、増産をするには、現代捕鯨は科学的に持続可能な捕獲を行うので、科学が求める調査が必要となります。IWC国際捕鯨委員会の科学委員会の反捕鯨国にツッコミを食らわない程度の作業は必要です。
その作業の完了(データの蓄積)に「最低3年かかる」とされています。科学的に不足なデータ量では捕獲可能な頭数を割り出せないです。調査は2019年から始まっていますから、2021年すぎまでは調査期間が必要となります。それでも最低限の調査となります。
従って、あと4年は冷凍備蓄(冷凍在庫)が存在しないと、国内の鯨肉供給は消費(需要)を賄えないことになり、規模は小さいですが鯨肉不足となります(若干の鯨肉不足感が出ます)。

鯨肉不足となっても北欧(アイスランド)から輸入すればいいかもしれないと安易な考えもありますが、その前に、アイスランド捕鯨が会社をたたむ(廃業の)可能性もある(アイスランド捕鯨は、日本の需要にこたえて業を維持してきましたが、日本の鯨肉離れが徐々に進行し売り難くなったので、日本が商業捕鯨に切り替えたことを契機に2019年から日本への鯨肉輸出を停止しています。)のが、イマドキの鯨肉事情です。


2020年7月末の数値データから消えたものは何か。

2020年7月末の数値データから消えたものは何でしょう。
これは推測の域を出ませんが、消えたものは、

①「調査捕鯨の副産物イワシクジラ」ではないでしょうか。数値の改正が2019年1月以後と、日本国のIWC脱退(捕鯨条約からの脱退)の決定以後からとなっており、2019年春先まで最後の南極海調査捕鯨があり、一方、2019年は北西太平洋での調査捕鯨イワシクジラ)は行っていません。つまり、ワシントン条約(CITES)の違反品までも冷凍食品の在庫に含めるのは、おかしい(または、まずい)という理屈です。

あるいは、
②2019年から輸入されなくなった「アイスランドナガスクジラ」など外国産の分かもしれません。外国産を除外する動機は、反捕鯨が鯨肉の冷凍在庫の保管に税金が使われると猛批判した際に、水産庁水産物流通調査」の「冷蔵水産物流通調査」のデータを用いたのですが、そのデータには、政府が税金を使わない外国産まで含まれており、誤解した(水増しされた)トン数で語り、世論を動かしたからです。


まずは、①調査捕鯨イワシクジラの可能性を考えましょう

www.jfa.maff.go.jp

 

www.mofa.go.jp

 

www.nikkei.com

 

www.asahi.com

調査捕鯨の副産物(北西太平洋産イワシクジラ)は、2014年の南極海調査捕鯨裁判の判決後から反捕鯨国らが問題視し、2018年のワシントン条約の委員会で違反状態への制裁までちらつかせ日本が屈服せざるを得なかった余波で、2019年1月以後の統計データからその分の数値を除外したのではないかと考えています。

ご禁制品だからと、千トン以上の大量のイワシ鯨肉を処分(焼却処分か埋め立て処分か)をしてしまうと、国内外から「モッタイナイ」と批判されるでしょうからそれはできず、消費者(国民)に消費してもらい、「食べて供養(命に感謝)」ということになっています。この方針を決める前に、日本政府はワシントン条約の委員会で、過去に捕った調査捕鯨イワシ鯨はどうするかを聞き、無回答または今後捕らなければよい(即ち、消費しても構わない)話となっている筈ですが、でも、ご禁制品を食品として流通統計データに記載するのは具合が悪いのかもしれません。意味不明な理屈ですが

ワシントン条約の委員会で、調査捕鯨イワシ鯨が違法(ご禁制品)となったことを日本政府は受け入れたので、それを加味した国の捕鯨政策が開始された2019年1月以後の統計資料からは調査捕鯨イワシクジラ冷凍在庫が除外されたという推測です。つまり、捕鯨国の感情的な猛批判(制裁付き)が原因と言えます。


次に、②アイスランド産やノルウェー産の可能性を検討しましょう

水産庁水産物流通調査」の「冷蔵水産物流通調査」のデータから、外国産を除いたのかもしれません。千トン近くの削減だとこの可能性もでてきます。
アイスランド捕鯨ナガスクジラを年千数百トン生産していましたが、2019年から日本へ輸出しておらず、今ある在庫(2018年まで輸入されたもの)が完売すればおしまいです。ノルウェー捕鯨はミンククジラ肉年数百トンを日本へ輸出しますが、大きな商売とは言えません。

除外した動機は、某・反捕鯨家が、鯨肉への冷凍備蓄を税金で行うことへの批判の際に、外国産を含む数値で、例えば「5千トン」などと批判しており、政策の実態と違う誤解を招くからです。
調査捕鯨の鯨肉(国産品)の一部は政策により備蓄されていますが、外国産は外国の捕鯨会社が独自に輸出入するビジネスです。
なお、この当時は、鯨肉の冷凍備蓄(冷蔵備蓄)は、某・反捕鯨家が言う「5千トン」ではなく、当時の「冷蔵水産物流通調査」では4千トン程度かそれ以下と示されています。4千トンから外国産千トンを除くと、3千トンの保管を政府が行っています。3千トンとは、当時の調査捕鯨1年分ほどにすぎない量です。日本は調査捕鯨を1年休んだ年すらあり、捕鯨の政情不安への最低限の備えとなっています。

数値を間違え誇大に言うのは、個人だけでなく市民団体もですが、捕鯨政策を批判する人らは市民(小市民)でしかなく、公開された情報を基に、国の政策を推測しているだけなので、「用いたデータ資料に外国産が含まれていること」を理解せずに批判していたようで、政策を正しく批判をするのはなかなか難しい例ともいえるでしょう。
捕鯨叩きは批判者が事象を針小棒大に言うことがしばしありますが、それを大勢が信じ込むと、国の妥当な、小さな政策が邪魔をされるのかもしれません。(迷信や世迷いごとが政策を変えることもある例です。)

ただ、くじら以外の他の水産物を海外から多数輸入し冷凍倉庫を使う中にあっては、「冷蔵水産物流通調査」から、今回7月末にアイスランドナガスクジラノルウェー産ミンククジラが除外された可能性は、「合法な輸出入品なので、余り無い可能性」とも考えております。


結論

①か②、どちらの可能性かはわかりかねますが、この結果、2019年1月以後の水産庁水産物流通調査」の「冷蔵水産物流通調査」のくじらの項目は、調査捕鯨イワシクジラか、外国産かが、数値データから除外されている可能性を加味しなければならず、正確な集計データとは言えなくなりました。
これは、反捕鯨国や反捕鯨家が感情論で猛反対した結果です。「毎度ばかばかしい話」といえそうです。

今回の数値の改正(修正)は、正確な冷凍鯨肉の在庫量や消費量が判らなくなるので、元に戻してほしいものですが、調査捕鯨イワシクジラは今夏には在庫が無くなるようですし、アイスランドナガスクジラも遅かれ早かれ無くなるようですので、数値の改正(修正)で影響を受ける時間はそれほど長くはないだろうとも予想できます。


現在の真の年間消費ペースはいくら? 今は見極める時期

水産庁水産物流通調査」の「冷蔵水産物流通調査」を基に、コロナ不況の前までは、「冷凍鯨肉は年間約800トン」で減っていると計算できました。
でも、2020年4月頃からコロナ不況が始まり、冷凍鯨肉の消費量も減っているはずで、今の段階ではコロナ不況下での鯨肉の年間消費量はまだ予想できないです。くじらは、捕獲する時期と消費する時期とに季節があり(季節によって入荷・出荷に差があり)、4月、5月の2か月の在庫データでは年間の予想は難しいです。
更にコロナ不況による鯨肉の消費の低迷があり、ますます冷凍在庫ゼロまで何年の猶予があるか現段階では予想できません。ただ、消費が落ちたので猶予が伸びているとは想像できそうです。今はどの程度、残された時間があるか見極める時期かもしれません。


個人は「鯨肉は今が買い」

鯨肉は消費が落ち込んでいる筈なので、各鯨肉加工メーカーや、くじらの消費者などが、鯨肉を慌てて買い占める必要は無いです。現時点で値段が落ちているので買い占めたいでしょうが、消費も落ち込んでいるので売り難いです。
ただし、価格が低下しているので、個人が大量買いなどして鯨食を楽しむことには向いています。

なお、噂話では、調査捕鯨イワシクジラは2020年夏に冷凍在庫が無くなるようです。
現実に、調査捕鯨イワシクジラは在庫が尽き果てるまで流通するでしょう。

ワシントン条約違反のご禁制品といえども、商品(食材)であることには変わりが無いのですけれども。


なぜ調査捕鯨イワシ鯨が標的となったか

調査捕鯨イワシクジラが、ワシントン条約(CITES)で叩かれたのは、日本が、国際司法での南極海裁判で負けたのにその戦場の南極海に居続け、日本を追い出す為の第二弾としてワシントン条約の委員会(日本側が圧倒的に少数派)が選ばれたのだろうと考えています。

当時(数年前)は、日本にお灸をすえるとか反捕鯨国から選出されたIWC議長(当時)だったかの西欧人がインタビューで言っていた記憶があります。周到に、日本が言うことを聞かない場合の対抗策(嫌がらせ策)を用意していたのでしょう。

 

さて、今は夏8月なので、第二次世界大戦日中戦争・太平洋戦争、あるいは原爆のTV番組があるのですが、21世紀の日本政府の南極海調査捕鯨と少し似たものを感じます。もはや戦局の挽回はできないのに粘ってしまい、更に打撃を受け、こじんまりとした商業捕鯨(白旗)で、各国の怒りを鎮めさせるところが、残念ながら似ているように見えてしまいます。


日本の捕鯨業は自立できるのか

アイスランド捕鯨が2019年に日本の市場から撤退し、大手捕鯨は生産量が4割減で、その穴埋めに、冷凍在庫が供給されています。年約800トンです。
これは逆に言うと、
アイスランドナガスクジラ(年千数百トン)が日本では商売にならないので撤退し、
②日新丸の捕鯨船団を擁する大手捕鯨業は生産量が4割減(大体2500トン→大体1500トン)で、
③沿岸小型捕鯨業は、それほど生産量が増えていないので(せいぜい100-200トン位の増加)、
従来の消費が健在ならば、鯨肉の冷凍在庫(冷凍備蓄)は2千トンは放出されねばならないのですが、商業捕鯨の開始で、鯨肉消費が落ち込む要素があったようで、冷凍備蓄は年約800トンの放出で済んでいます。つまり、年千トン程度の消費が消えています。

2019年の商業捕鯨の開始の年は、2018年の調査捕鯨の時よりも値段が25%上がっております。これに伴い販売がうまくいってないのかもしれません。

 

鯨肉に魅力を取り戻すには、食材に見合った買い求め易い価格にまで値段を下げる外に道は無いのですが、販売価格が抜本的に下げられるほどの生産量は将来に渡って期待できない状況なので、今の所、安売りせずに、鯨肉の魅力(価値)をわかって貰う戦略のようですが、販売にかなりの努力が必要となるのではないでしょうか。

 

 

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